2007年03月14日

たまには考えてみよう『半落ち』

監督:佐々部清
原作:横山秀夫
出演:寺尾聰柴田恭兵、伊原剛志、國村隼、吉岡秀隆、石橋蓮司、西田敏行、鶴田真由、原田美枝子樹木希林、高島礼子


元刑事で現在は警察学校教官の梶(寺尾聰)が、
「三日前に妻を殺害した」
と出頭して来た。
梶の妻・啓子(原田美枝子)は若年性アルツハイマー病を患っており、自分が壊れてしまう前に殺してほしいという彼女の願いにより絞殺、自身も死ぬつもりだったのだと言う。
しかし、出頭するまでの“空白の二日間”に関しては、決して語ろうとしない梶。
果たして、本当に彼が殺したのか。二日の間にいったい何があったのか‥‥。

映画では、
「常に誰かのために生きて来た」
と評される梶という人間とその家族に絞って描かれているため、警察・検察サイドのドラマは、未読ながらおそらく小説からずいぶん削られているのだろうなと感じます。
その点、原作を読まれた方にとっては物足りない部分もあるのでしょうが、2時間という絶対条件下では、視点をぐっと絞って描いたことがおそらく正解。
エンディングで流れる森山直太朗さんの主題歌含め、地味ながらまとまりの良い、力のある映画だとは感じました。

寺尾さんが、泣くことも檄高することもなく、時に微笑みすら浮かべる姿が、かえって悲しみの深さと、己れの信じる愛を貫こうとする覚悟の大きさを感じさせるんですよね。
刑事だけど今回は一切走らない(笑)恭兵さんも意外なほど味があるんですが、
それまでずっと静かなドラマの傍観者であった見る側を、一気に当事者に引き込んだ、法廷での樹木希林さんが見事。
そして、本当に最後のワンシーンだけ、梶を乗せた護送車の運転をする老警務官として笹野高史さんがご出演。梶がどんな刑事、人間だったのかがそれだけで理解できる素敵な演技を見せてくださいます。

「魂が亡くなった時、人は死ぬ」
と言う梶に対し、
自らもアルツハイマーの父を持つ裁判官(吉岡秀隆)が、自らにも言い聞かせるように吐く言葉
「魂が亡くなった時が人の死かどうかは、貴方にも決めることはできないし、私にもできない」
が表すように、
法を犯した以上、法によって裁かれるわけですが、
それが正解なのかどうかは、最後まで誰にもわかりません。
「生きる」こと。
そして
「愛」とは。

少し考えさせられる一作です。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


さてここからは普通の日記。


ひと月ぶりに、祖母が入院する病院へと行った。


入院前、あれほど明晰だった祖母も、日がな一日誰ともほとんど話さずテレビを見ているだけの生活のためか一気に物忘れがひどくなり、
二週間ほど前には、
祖母と同居していた私の従姉妹が、今年小学校に上がる娘と見舞いに行ったところ、
「来年はめいちゃんとこが小学校入学やな〜」
と繰り返したという。
はたしてアタシに隠し子でもいたのか、
それともアタシがまだ幼稚園生のつもりでいるのか。
いずれにしても、今後私はどう話を合わすべきか、そもそも私のことを認識できるのか、かなり戦々恐々とした状態で訪ねたものの、まあまあ、その点は拍子抜けするほど難なくクリア。

ただ、
従姉妹からその報告を受けた時、最初はとてもショックだった。
私は祖母にはかなり可愛がられてたはずで、
なのになんで一番最初にわかんなくなっちゃうのよ〜
って気持ちと、
だったらアタシに何ができるのか?
ってのと。
何ができるか考えたところで、結局は、
私がわかるうちに、なるべくしょっちゅう会いに行って思い出を作ろう。
くらいしか浮かばず、
だけどその思い出ってヤツは、ばーちゃんのためじゃなく、しょせん(おそらく)残される自分のために過ぎないんだよな〜‥‥と思ったり。


今回は無事に分かり合えた私たち(笑)。
9kg軽くなったらしい祖母を乗せた車椅子を押し、売店に行った。
部屋に戻ってからは、簡単な近況報告をして、
思い出話をたくさん聞いて、
そのほとんどが私の小さい頃の話であることに切なくなって、

ふとした瞬間、祖母が

「あ〜あ、夢がついえてしもたわ」

と呟いた。
何が?
と問い返すと

「今、積立してるのが満期になったら、たとえ何百万かだけでもめいちゃんの名義で残してやりたかったのに‥‥」

と。

これは、
きた‥‥。

別にお金云々の問題じゃなく、
とにかくずっと楽しい思い出の中心に私を置いてくれていて、
そんな夢を持ってくれていたこと。
アタシはなんて愛されてたんだろう‥‥と一気に込み上げるものがあり、涙を零さないように堪えるのが精一杯だった。
その後の私は、はたしてちゃんと上手に笑えていたのか。
おばあちゃんに心配させるような顔をしていなかったか。
自信が、ない。


帰り際、

「今日はいい一日やったわ」

と、本当に幸せそうに笑う祖母の顔と声に、再び景色が滲む。

また、来るよ。
今度は、おじーちゃんの好きだった新宿中村屋の栗饅頭持って来るよ。

そして思った。
それしかできないことを申し訳なく思っていたけれど、
たとえそれが自分のためであっても、なるべく足を向けることこそが、祖母にできる最高の孝行なんだ。
その時ようやく本心から感じた。

遠方で駅からも離れているため、仕事をし始めるとなかなか足を向けられなくなるだろう。
だからこそ今のうちに、少しでも顔を合わせ、一つでも多くの言葉を交わして、
そしていつか、
ばーちゃんが本当に私のことを忘れてしまったとしても、
そのぶんアタシが覚えていてあげるんだ。
それから、
どれだけ愛を注いでもらったのか、ちゃんと胸に刻んで生きて行こう。

そう、誓った。


いつも大切なことを教えてくれる背中を、アタシには覚える責任がある。


「最近、ヒガシ(@少年隊)はどうなん?」


その言葉だけは、聞かなかったことにして‥‥。

(ばーちゃん、どーしてもそこだけは外せんのかぃ‥‥)

(-_-)y-~~
posted by めい at 19:57| Comment(11) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いろいろ考えることは多いけれど、
いろんなことを考えて、感じられることって、
自分にとっては幸せなのかもしれない、、、と、思うことがあります。

私はこないだ桜餅を持っていって、一緒に食べてきましたよん☆
(よく食べるんだ(苦笑))
Posted by 相方 at 2007年03月14日 23:52
>相方へ

そんなものかもしれないね。
病室は天井から床までのでっかい窓があるんだ(バルコニーに出る戸なんだけど)。
そこから見える風景が、もうすぐ桜でいっぱいになるんだって。
そしたらアタシも桜餅持って、ばーちゃんとのお花見しようかな(笑)。
Posted by めい at 2007年03月15日 01:38
ちなみに、
うちのばーちゃんも、
「男の人は、背が高くなくちゃ、、、」
とかゆってます。
(じーちゃんは背高かったっす、はい・・・)
Posted by 相方 at 2007年03月15日 09:59
ドラマの見るのかー♪
Posted by BlogPetの姐さん at 2007年03月15日 12:52
>相方へ

ウチのじーちゃんも背は高かった、らしい。
ま、御歳87才のばーちゃん自体が162cmだからねー(笑)。
石原裕次郎と
ヒガシ。
とてもわかりやすいです。
(-_-)
Posted by めい at 2007年03月15日 16:09
めいさん、
貴女はほんとーに素敵な人です。
人さまの日記なるものを読みながらこんなに涙するとは思いませんでした。はい。

ばぁちゃんと父にえらく可愛がられて育ったばったにはもうできない『孝行』、いいじゃん、自分のためでも、、、。
たんとしてさしあげればさ。
おばあちゃまもおお喜びさ。

Posted by ばった at 2007年03月15日 21:58
>ばったさんへ

幸せ、なのだと思います。
もちろん、それが過酷な介護を伴うものであったりすれば一概にそう言い切れないとも思いますが、甘ったれで弱虫な孫のために、なるべく優しい思い出だけを残そうとしてくれているおばあちゃんの、その生き方含め、ちゃんと見ておかなきゃと思ってます。

‥‥って、やぁねぇ〜。
こんなアタシのキャラにない真面目なこと上げちゃったら、この後、バカ映画のレビューが上げにくいったらぁ〜<爆>
(;^_^A
Posted by めい at 2007年03月15日 22:50
そこは、二重人格…っつーことで。

めったにお邪魔しませんが、楽しみに読んでるよんっ。笑いながら、ときには泣きながら、、。

Posted by ばった at 2007年03月15日 23:07
>ばったさんへ

ありがとう。
いつでも声かけていってね。
心は狭いけど間口は広いから<爆>
(*'-^)-☆
Posted by めい at 2007年03月15日 23:44
横入り、失礼します。

「心は狭いけど間口は広い」

そして、
別口は深くて、螺旋形なんでしょ?
(・・?

Posted by 相方 at 2007年03月16日 14:43
>相方へ

蝶を捕らえるための蜘蛛の巣ももちろんね‥‥

(-_-)y-~~
Posted by めい at 2007年03月16日 22:58
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